旋律的 林巧公式ブログ

旅とおばけと音楽と、小説とごちそうと物語について。

スリー/臨死

スリー/臨死 (角川ホラー文庫)

スリー/臨死 (角川ホラー文庫)

 いかがでしたでしょうか。
 三つの小説は、韓国(キム・ジウン)、タイ(ノンスウィー・ニミブット)、香港(ピーター・チャン)の三人の勢いのある若手監督が作品を寄せ、アジアならではの味わいをもつ新世代のオムニバス映画として、二〇〇二年に制作された「スリー/臨死」のノベライズ作品です。
 英語のタイトル(第一話 メモリーズ/ 第二話 ホィール/ 第三話 ゴーイング・ホーム)を漢字にすれば“記憶”、そして“輪廻”、最後の作品は“回家”という中国語のほうがしっくりします。いずれも人間存在の、あるいはひとの心の、根本的なありようにかかわるテーマを取り扱ったものです。
 三つの小説のなかには、映画にはまったく出てこないエピソードや、キャラクター、あるいは情景があらわれます。一方で、映画のなかでみられる映像イメージでも、小説のなかでは敢えて出てこないものもあります。
 それは、ひとつの物語を語るにしても、小説と映画では、あるいは言葉と映像とでは、おのずと語り口が違うからでもあり、ひとつの物語(映像)が、異なる物語(小説)を生み落としたからでもあります。
 だから、どちらを先に……、という気遣いは必要ありません。小説と映画を、それぞれに愉しんでいただければと思います。

 三つの物語は、いずれもアジアで生み落とされたアジアの物語です。すでにお気づきのように、アジアは私たち自身です。三つの物語は、つまるところ、それぞれの主人公があなたであったかもしれないし、私であったかもしれない……、人間の根本的な物語なのです。