旋律的 林巧公式ブログ

旅とおばけと音楽と、小説とごちそうと物語について。

いい旅って?

 たぶん、旅にはふたつの種類しかない。きらきらとした輝きに包まれた旅と、倦怠と疲労に埋もれた旅。それはホテルの部屋の善し悪しや、飛行機や列車の乗り換えのタイミング、すれ違った外国人の優しさ、冷たさ……なんかとは、全然、関係がない。ふたつの旅は、決してそんなところで分かれはしない。
 旅を恋といいかえてみよう。きらきらとした輝きに包まれた恋と、倦怠と疲労に埋もれた恋。ふたつの恋が分かれるのは、どこだろう? もちろん、恋する相手による。でも、やむにやまれず墜ちてしまうから恋であって、その途中であれこれと、はっきりと目にみえる、いろいろな条件が気になりだすようじゃ、ほんとうの恋じゃない。旅もちょっとそんなところがある。ひとつの恋が眩しい輝きに包まれているか、どんよりとした倦怠に包まれているかは、実は、恋する相手によるんじゃなくて、自分自身の魂のありかた次第ではなかろうか。
 旅もおなじだ。旅人の魂がふるえているか、沈んでいるかで、ふたつの旅が分かれてくる。それは、実のところ、はっきりと目にみえる、身の回りの状況とは、かかわりがないことが多い。どれだけ薄汚れたシーツの安宿だって、魂がふるえている旅人にとっては、きらきらとした風景にみえるだろう。逆に、どれだけラグジュアリーな客室だって、魂が沈んでいれば、薄暗い雲のただなかのように感じられるだろう。
 だから、いい旅をするためには、自分自身の魂をきちんと気遣うことが、何よりも大切だ。魂っていうのは、喜怒哀楽よりも、ずっと深いところにある。ゲラゲラ、笑いつづけているひとの魂が、すっかり沈んでいることなんていくらでもある。……だから、Bless you! って、そういうことさ。あなたの魂を大切に!


……「ふたつの旅が分かれるところ」より