旋律的 林巧公式ブログ

旅とおばけと音楽と、小説とごちそうと物語について。

うまいものをつくるには?

h_major2007-07-17

 たぶん、三つのやり方があります。段階的に。
 まず心底からほんとうに好きなもの――どんな遠い土地にでも、どんなに値段の張るレストランにでも出かけて、“食べたい!”と思う料理――を、自分の手でつくること。もちろん、すぐにはできません。でも、それがほんとうに好きなら、尋常でない集中力を発揮して、必ず大抵の店よりも自分好みのうまい料理をつくることができるようになります。ぼくは肉が好きで、肉料理に取り組んでいるうち、ステーキも、焼き肉も、鶏の丸焼きもつくれるようになりました。ステーキはオリーブ油、ニンニク、黒胡椒だけの、フィレンツェ風。焼き肉は、牛肉と羊肉、ホルモン、レバ、タンなどを、塩、醤油、味噌だれ、と三つの味に分けて、もみこみます。つけだれも、酢と醤油、胡麻油、ねぎ、ニンニク、ショウガなどでつくります。コチュジャンを、韓国料理の本をひもときながら、唐辛子と味噌、餅からつくった年もあります。鶏の丸焼きは、レモンとハーブのバターを回しかけながら、デロンギのオーブンで半日かけて焼き上げます。ぼくはたまたま肉ですが、それが好物であれば、それくらいの料理は誰にでもできるのです。
 好きなものが一応つくれるようになったら、自分のためではなく、誰かのために――家族でも、恋人でも、パーティのためでも――料理をします。ごちそうは本来、ひとりで食べるものではなく、誰かと分かち合うものです。それに一定分量以上の料理をつくらないと、どうしてもうまいものはできず、技術も伸びません。料理は文化そのものだから、出身地やバック・グラウンドが異なるひとたちと、ひとつの料理を食べると、それだけでたくさんの驚くべき発見があるものです。
 そして、最後のコツは、マンネリズムに陥らない――そのために、未決定の部分を、少しでいいから、必ず残しておく――ことです。たとえば、付け合わせの野菜とか、スープの具とか……を、あらかじめ決めず、たまたまある食材で、瞬時に判断し、つくってみる。足りない食材があっても、すぐ買いには走らず、冷蔵庫にある何か別の食材で工夫してつくってみる。調味料ですら、ある程度の融通は効きます。塩が切れても、醤油や、味噌があれば、料理はできます。
 こうした試みには、食材や基本的な調味料と、できあがりの料理とを結ぶ、しっかりとした想像力が必要です。その想像力を日々、働かせていると、料理づくりの基本的な“筋肉”のようなものが培われます。そして、その“筋肉”を駆使して、うまいものをつくることこそが――たとえば、サッカー選手がボレー・シュートを決めたり、ピアニストがカデンツァを弾き切ることのように――料理の創造性であり、料理をつくる根源的な愉しみのひとつだ、と、ぼくは思うのです。